天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 わざと私を名字で呼びニヤリと笑う彼は、エレベーターを降りていった。


「な、によ」


 陽貴さんの甘い声が残る右耳を押さえて、呆然と立ち尽くす。


「充電、か……」


 オペの間だけ抜けさせてもらったのだから、早く戻らないと。

 ニタつきそうになる自分を制して、病棟へと急いだ。



 帰宅したあとは夕飯作りをさぼってコンビニ弁当を頬張ったあと、早速陽貴さんに借りたオペの映像に没頭した。

 迷うことなくメスを進める陽貴さんの手元を見ていると、本当に技術があるドクターなんだなとわかる。


 見ているのは聴神経腫瘍のオペ。

 良性の腫瘍で摘出すれば根治を望めるが、聴神経や顔面神経が走る場所にあるため手術は難しい。

 それらを傷つけると聴力を失われたり顔面に痛みが残ったりする可能性があるからだ。


「速い」


 顕微鏡をのぞきながら行っているとは信じられないほどだった。
< 332 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop