【完】セカンドマリッジライフ
眼鏡の奥の鋭い眼光が光る。チッと舌打ちをして彼がペンを手に取って、婚姻届けに記入を始める。
「加賀美 利久」と夫になる人の欄に美しい文字を滑らせていく。 それを覗き込むように身を乗り出すと、やはり彼は怪訝そうな眼差しでこちらを見つめる。
「何がそんなに楽しい。さっきからニヤニヤしやがって…」
「キャハハ、怖い顔~~ッ。 それにニヤニヤしてるわけじゃありませーん!元々こういう顔なんでーす!
利久さん、ふつつかな娘ですけれどよろしくね?」
「フツーそういう事は自分じゃ言わねぇ。 つーかどうでもいいけど、こんなん紙の上での契約のようなもんだ。
こっちは楽しく新婚ごっこなんてしたいわけじゃねぇ」
「あーーーッ…噂通りねぇ。おっかしい!
定一さんの言ってた通りの人!」
「じーさんから何を聞いたかは知らんが俺の生活に干渉はしないように」
「あらら…でもこれから共同生活を送っていくならある程度は仲良くしなくっちゃねぇ。 そんなにむっつりしてばかりじゃあ相手に気を使わせちゃうでしょう?」
「偉そうに。まさかこんなに騒がしい女が来るとは夢にも思わなかった…。つーかじーさんの戯言を本気にする女がいるとはな。」