【完】セカンドマリッジライフ
北海道に来たら、一軒家のアットホームな動物病院。
そこには不愛想で人間嫌いと噂の獣医と、ヨークシャテリアの小型犬。白と黒と茶色の三匹の猫。
私はこの地で「秋月 雪乃」という名前から「加賀美 雪乃」に生まれ変わる。
長かった髪をバッサリと切ってショートヘアーにして、スッピンに近い顔で「みどり 動物病院」の助手として、彼の名ばかりの奥さんになって働く。
私は自分の今までの名前を捨てて、人生に疲れたから結婚したかった。
彼はきっと、周囲にうるさく言われる為結婚をした。 北海道で小さな動物病院を経営しながらゆっくりと暮らしたかったんだと思う。
そこに愛や恋といった感情はない。ないからこそこの生活が成り立っていくのだ。 そもそもこの話を持ち掛けたのは、東京で出会った彼のおじい様である、加賀美 定一だった。
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北海道に移住を決めるまでは色々な事があった。
この1年間は腐り切った生活を送って来た。いわゆるニートという奴だ。
生活に困ってはいなかった。 貯金は腐るほどあって、都内の高級タワーマンションで数年働かずに暮らそうとも困らない額は持っていた。
しかしこんな生活を望んでいたわけではない。