【完】セカンドマリッジライフ

「うー……ゴホン。 先生も雪乃ちゃんも仲が良いのは分かるけど、そういうのは診療外の時間にやるべきさーー」

すっかりと二人の世界に入ってしまっていた私達は、来院されているお客様が居るのにも気が付かずに抱き合っていた。

バッと互いの体を離すと、利久さんの顔は真っ赤になっていて思わず大爆笑してしまった。

「浅井さん、こんにちは~。今日はチカちゃんの爪切りでしたっけ~?どうぞどうぞ診察室に~!
ささ、仕事。先生も固まってないで準備してくださいよ!」

今日も一日が始まる。
みどり動物病院にやって来る近所の人達。
ねぇ、私23年間生きてきてこんなに充実している毎日は初めてなの。


動物病院の仕事なんて全然知らなかったけれど、本当に楽しくて色々な人と会える。
モデルをやっていた数年も楽しかったけれど、後ろを省みる事さえ出来ず忙しかった。

あの頃は周りからもチヤホヤされてスポットライトが当たる世界で、秋月 雪乃はこの世に一人しかいないと言われて、私にしか出来ない仕事をしていた。


けれど加賀美 雪乃になった今は もっと幸せ。あの頃よりうんと幸せだと言える。
加賀美 雪乃だってこの世に一人しかいない。
そして利久さんと一緒にする仕事だって私にしか出来ない。

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