【完】セカンドマリッジライフ
利久さんと一緒ならば苦手な家事だって楽しかった。 二人で笑い合って過ごしていれば時間はあっという間に過ぎていく。
心の片隅にあった不安をかき消すように今一緒に居れる幸せを噛みしめた。 愛しさは絶える事はないようだ。 朝起きてから、夜寝るまで利久さんとずっと一緒に居れる時間は絶え間なく楽しかった。
五月、六月と過ぎて北海道もすっかりと暖かくなった。
爽やかな風が吹き抜けて、からりと乾燥した空気。 北海道に梅雨がないという噂は本当らしい。
東京は六月に入って行くとジメジメとした日が続きやがて梅雨の時期に入る。 そしてやがて灰色のコンクリートをじりじりと焼き尽くす夏がやって来る。
夏は余り好きではなかった。 けれども利久さんは「北海道の夏はとても短くあっという間に過ぎ去ってしまう」と言う。
だからそんな儚い夏までもが北海道に来てからは好きになりそうだ。 この地に来て価値観や人生観まで変わっていって、本当に今までの自分が存在しなかったもののようになっていきそうだ。
それでも私は冬の北海道が一番好きになる予感しかしなかった。 だって雪がしんしんと降り積もる冬は私と利久さんが出会った季節だから。
私達はこれから本当の夫婦になって、幾つもの冬の季節を一緒に越えて行く。未来を想像してこんな嬉しい気持ちになるの初めてだったんだ。