【完】セカンドマリッジライフ
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六月の終わり。動物病院がお休みの休日に利久さんに「映画でも見に行こう」と誘われて、駅前までやって来た。
映画を見終わってランチをして、二人でぶらぶらとウィンドーショッピングをしている時、とある場所で利久さんが足を止めた。
この街で一番大きなショッピングモールに入っている宝石店だった。 珍しく利久さんが強引に私の腕を掴んで、お店の中に入って行く。
そして店員さんに向かって驚く言葉を口に出したのだ。
「結婚指輪を探しているんですけど…」
「?!?!?!?」
思いもよらないサプライズを前に、ポカンと口を開けて利久さんを見つめる私はアホ面をしていたと思う。
ガラスケースの中にはキラキラと眩い光りを放つ高級なジュエリーばかり。 仕事やファッションショーで高級なアクセサリーは幾つも身に着けてきた。
そして元カレもジュエリー関係の仕事をしていたので、高価なアクセサリーは貰った事がある。 昔は高級なアクセサリーや洋服を身にまとう事が一種のステータスだと思っていた。
けれど北海道に移住する際にそういった類の物は一切手放してしまったのだ。 だから今私の胸に光っているのは、利久さんからあの日貰ったガラス館の空色のネックレスだけ。 けれどそれは今の私には充分すぎる。…なのに。