【完】セカンドマリッジライフ

「ほら、結婚指輪買ってなかっただろう」

こほんと小さく咳ばらいをして利久さんは照れくさそうに言う。

「でも…ネックレスも買って貰ったし…本当にいいんですよ?」

「遠慮する事はない。 もし君が欲しいのならば婚約指輪つーのもセットで買っても構わない。
好きな物を選べ」

「そ、そんな!本当に…私は今のままで充分幸せだし…」

その言葉に嘘はなかった。 利久さんがいて、温かい家があって、可愛らしい犬や猫達がいるあの家は私にとって探していた幸せそのものだ。

これ以上を望めば罰が当たりそうだ。 充分。充分幸せだったのに。

「こういうのは記念だ。 たまにはかっこつけさせろ。 ほら…雪乃は指が細くて長いから指輪が良く映えそうだ。
あれなんかどうかな?」

勿論記念になる指輪を買って貰えるのは嬉しい。 …でも一番嬉しかったのは利久さんのその言葉だったんだ。

思わず感動してぎゅーっと強く利久さんの腕を握り締める。 不思議そうな顔をする利久さんに向かって、にこりと笑う。 するとゆっくりと利久さんの頬が緩んでいくのが分かるんだ。

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