【完】セカンドマリッジライフ
自分で口にして気が付いた事がありハッとしてしまう。 確かに私は初婚で結婚指輪を貰うのも嵌めるのも初めてだ。
でも横に居る利久さんは当たり前に初めての事ではない。 それを考え出すと自分でも驚く程落ち込んでしまう。 悟られないように笑顔を大袈裟に作る。
きっと利久さんにはこうやって結婚指輪を贈った人が他にも居る。
私以外にも愛していた人が居る。 そんな事過去の事なのに、どうして思えば思う程胸が締め付けられるように苦しいの。
苦しい時ほど大袈裟に笑うのは癖になっていた。 こんな癖、止めてしまいたいのに。
「何を考えているんだ?」
赤信号で止まった車内でジーっと利久さんは私の顔を見つめる。 心を見透かされてしまわないように「何でもないよ」と言って口を大きく開き笑う。
良くない癖だって知ってる。 でも悪い事ばかりでもないって。
例えば仕事でどれだけ辛い事があっても私さえ笑っていれば周りは安心してくれるし、元カレの浮気が発覚した時だって知らんふりして笑っていれば彼だって嫌な気持ちになったりしない。