【完】セカンドマリッジライフ

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紙切れ一枚で夫婦になれる。 それは不思議な気分だった。

雪の舞う夜、私達は市役所に向かい晴れて夫婦になった。 定一さんの言っていた通り、利久さんはいつも仏頂面で不愛想で寡黙な人だった。

「私、これから加賀美 雪乃なんて。生まれ変わった気分…!」

「何も夜中に市役所に行く必要もあるまい。今日は仏滅だ。最低な気分だ」

「あらあ、別に愛し合って結婚を決めた二人でもないのに仏滅とか気にするんですねぇ、利久さん。」

帰りの車内。 ブラックアイスバーンのお陰で車のタイヤはツルツルと滑った。 滑る度にびっくりする私に対し利久さんは慣れっこらしく、ポーカーフェイスのままハンドルを握る。

初めて会った人だけど、居心地の良い声だ。 ほどよく低音でいわゆるイケボという奴か。

「フンッ。別に俺は君が出て行こうが離婚をしたいと言いだそうが何も思わない。
こんな結婚に感情なんて必要ない」

「えー…せっかく入籍したのに離婚なんて縁起でもないワード出さないで下さいよぉ…!
一緒に暮らすならば仲良くしましょう…!」

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