【完】セカンドマリッジライフ
「君は本当に……毎日初めてのようなリアクションをするな…。 武蔵と一緒だ」
’武蔵’と利久さんが口に出すと、ゲージの中で寝ていた武蔵が耳をぴくぴくと動かして
慌ててこちらへ走り寄って来る。 そして食卓テーブルの下でちぎれんばかりに尻尾を振るのだ。
「きゃはッ。武蔵どぉしたの~??可愛いなあー。私武蔵と一緒だって?嬉しい!!」
テーブルの下手を伸ばすと武蔵は嬉しそうにペロペロと舐めた。 呆れ切っている利久さんは頬を少しだけ緩めた。
「武蔵も毎日同じ事の繰り返しのはずなのに、いつだって嬉しい時は毎日初めてのようなリアクションをしてくれる」
「だってー毎日嬉しいものね?ね?武蔵?」
武蔵の真ん丸の大きな黒目が、キラキラと輝いている。
リビングの床暖房の上で三匹丸まっている猫たちも、幸せそう。
私も北海道に来て、とても幸せだ。 こんな風に穏やかに流れる時間を可愛い動物たちと、優しい街の人達と過ごせる。
そして私の幸せは利久さんが用意してくれるものだ。 美味しいご飯にやり甲斐のある仕事。自然に流れていく毎日を愛しいと思うようになるのには、時間が掛からなかった。