【完】セカンドマリッジライフ

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名ばかりの夫婦という形。 そういう形だから私達の間には勿論体の関係はない。一緒に暮らしていたとしても寝室は別々だし、少しずつ仲良くなっていってもそういう雰囲気にはならない。

当たり前っちゃー当たり前なんだけど。お互いの利害の一致のための共同生活だ。  …終わりは知らない。 でももしも利久さんに出て行けと言われたら私はここを出て行かないといけないだろう。

期限もなけりゃルールーなんつーものも曖昧だ。


19時に全ての業務を終えて20時にちょっぴり遅い夕食だ。

利久さんが夕食の準備をしている間、私は武蔵と猫たちと暖かいリビングでゆったりとした時間を過ごす。

これももう定番になってしまった。


北海道は眠る。外が暗くなるのも早いし朝が明けるのも遅い。 東京のように24時間明りがともる不夜城もないし、遊ぶ場所も少ない。

必要最低限の物しか持ってこなかった。 服も仕事着と部屋着のみで殆ど昔着ていた私服を着ない。 化粧も殆どしないのでメイク用品も余り必要はない。

必要最低限で生きていける。 私を’秋月 雪乃’だと気づく人間もいなかった。 それがこんなに心の落ち着く癒される時間だったなんて……。

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