【完】セカンドマリッジライフ

そこに私の会いたい人がいた。 だから私ははるばる東京から会いに来た。



東京の生活の何が辛かったかは定かではない。 色々な事が積み重なった結果なのだと思う。
23歳になった瞬間、暮らしていたマンションを引き払いトランク一つでこの地に降り立った。

長かった髪をバッサリとショートまで切って、誰も私を知る事のない場所で、新しい生活を始めたかった。 この話を持ち掛けられた時は軽いノリだった。

周囲の人間は口を揃えて言った。 ’東京生活が染みついているお前に、北海道のド田舎でなんて暮らせるものか’と。

それでも私は疲れ切っていて、どこかに逃げたかったのかもしれない。 そして、私はこの街で人間嫌いな獣医と出会う事になるのだ。

―――――

住宅街に連なって並ぶクリーム色のちょっぴり大きめな一軒家。
「みどり 動物病院。」 そう書かれた看板の文字の横には犬と猫のイラストが描かれている。

造りとしては、どうやら一階が病院になっているようで二階が自宅のようだ。 インターホンを鳴らすと私を出迎えてくれたのは、一匹の小型犬と三匹の模様の違う猫。 そして、黒縁眼鏡をかけたやたらと身長の高い不愛想な男だった。

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