【完】セカンドマリッジライフ
「ふっふふ。きゃはは…!」 思わず笑みがこみ上げる。4匹プラス一人。ぎょっとした顔をして私達を見下ろすのは、不愛想な男の怪訝そうな表情。
「…一体何だというのだ…。 何がそんなに楽しい?
まさかこんな僻地に本気で来るとは…。」
見下ろすは、高身長の男。 診療はとっくに終わっていたらしく、髪をぐしゃぐしゃに振り乱す、無造作な黒髪だ。
上下真っ黒の部屋着を着て、黒縁眼鏡をゆっくりと上げる。一見冴えない感じに見えるけれど、眉目秀麗。 ツンと尖った鼻先に眼鏡の奥の鋭い瞳。むすりと口角を垂れ下げているけれど、きっと笑ったら綺麗な笑顔に違いない。
…話に聞いていた通りだ。いや、話以上だったかもしれない。
淹れたての珈琲カップがテーブルの上、二つ並ぶ。 彼はハァーと大きなため息を漏らした。
むくりと起き上がると、びくりと肩をすくめる。そんなものはお構いなしで、トランクの中を漁って一枚の紙を取り出して彼へと見せる。
彼の口角の下がった口元が僅かに引きつる。