御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
生演奏をBGMに使うお店なんて初めてだったので、驚くと同時に、席的にそのピアニストに背中を向けてしまうことに申し訳なさを感じる。
前には夜景、後ろには生演奏という豪華すぎるものに板挟みにされ戸惑っているうちに、東堂さんが適当に注文を済ませてくれる。
正直、メニューを渡されても困るだけなので「適当で構わないか?」と聞いてくれて助かった。
他の席では、上品そうな方たちが各々静かに食事と演奏を楽しんでいた。年齢層はバラバラだけど五十代以上の落ち着いた方が多いように見えた。
スタッフがグラスにワインを注ぎ、一礼してから離れる。
そして、お互いにひと口飲んだところで、東堂さんが「見合いの席では失礼な言い方をして悪かった」と話を切りだした。
「正直、親が勝手に持ってきた見合い話だったし、お互いに利害関係が目的だと思い込んでいた」
「利害関係なんて、そんなつもりは……」
そもそも、東堂さんとの縁談がまとまったところで、うちにはプラスに働くことはあっても東堂さん側にメリットはないと思う。
昭文さんの会社や立場を下に見てバカにするつもりはまったくないけれど、うちくらいの会社なんて五万とあるし、もしも事情があって昭文さんの会社を手に入れたいのだとしても、東堂プロダクツなら縁談するよりも買収した方が話が早い。
「あとから親に〝友人の娘であって、仕事は関係ない〟って聞いて反省した」
目を伏せていた東堂さんが私を見る。
真面目な色の瞳にわずかに胸が跳ねた。