御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
「〝ショックだ〟って言われて、ハッとした。俺は、どうせ家のための見合いだからって割り切って名前も確認していなかったから、俺と話すための話題だとかをずっと考えてくれていたって聞いて……そこで初めて申し訳なく思った」
「あ……でも、私が勝手にお見合いに夢を描いていただけですから。東堂さんは忙しいし、仕方ないですよ」
あまりにきちんと反省してくれているので、逆にこちらが申し訳なくなってきて言うと、東堂さんは「いや。俺が悪かった」と緩く首を横に振る。
「〝東堂〟っていう名前じゃなく、俺個人と話そうとしてくれてたことにあとから気付いた。あの見合いで、もしも俺がしっかり向き合っていたらどんな会話をしたのかが気になって仕方なかった」
ゆっくりとした口調。低く通りのいい声には、土曜日のような冷たさはなかった。
「誰か特定の人間との未来を想像したのも、その未来を欲しがったのも、初めてだった」
目を合わせ言われる。
「どうしても謝りたくて、無理を言って朝早くに受付に通してもらったんだ。少しでも早くと気が焦っていた。突然訪問して迷惑をかけたことも謝る」
「あ、いえ」と首を横に振ってから、「そうだったんですね」と相槌を打つ。
今朝の来訪はそういう気持ちからだったのか、と納得しながら笑顔を向けた。
「もう、大丈夫ですから。気にしないでください」
「でも、気を悪くさせた。それくらいはわかる」
本気で謝ってくれている様子に、少し言葉に迷ってから口を開く。