能力を失った聖女は用済みですか?
「ア、アイーシャ?どうして……」

『泣くだけで、何の役にも立たぬ者だったが、使い道はあったようだ』

「オレたちをここに連れてくるためか」

カイエンはラシッド(邪神)と私の間に立ちはだかり、剣を構えた。

『そう。私が操っていた』

ラシッドは青白い顔で不気味に微笑んだ。
その時、私は唐突に理解した。
ダメ王子のラシッドが、あんなに見事に指揮を取れるわけがない。
感じた違和感は、気のせいじゃなかったのだ。

『ロランが滅びれば、次はシャンバラへ行く。王と聖女を失った民の絶望ははかり知れぬ。さぞや美味だろうよ』

「させるかっ!」

カイエンは、素早く剣の柄でラシッドの顎を殴った。
防御体勢を取ってなかったため、ラシッドは大きく頭を揺らした後、2、3歩よろいて気絶した。
だけど……本体の邪神はふわりとラシッドから抜け出ると、ベルベットのソファーへと余裕で腰かけた。
その姿は妖艶な邪神アイーシャに戻っている。

「邪神が移動しました!」

「は?どこだ!?見えないぞ?」

部屋をキョロキョロと見回すカイエンには、邪神が見えていない。
精霊や地母神、その類いはきっと、私にしか見えないのだ。
カイエンは四方に意識を集中し、剣を構え攻撃に備えているけど、邪神に剣は効きそうにない。
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