能力を失った聖女は用済みですか?
一度開き直ってしまえば、あとはもう落ち着くだけだ。
落ち着くために出来ることはいろいろあるけど、ここぞとばかりに私は肩から提げた袋に手を突っ込んだ。

「カイエン様。これ、どうぞ」

取り出したのはルナシータの袋。
それをバリバリと破いて一本取り出すと、カイエンに渡した。
甘いものでも食べて、一旦落ち着こう作戦である。

「……あ、ありがとう……」

「おいっ!食ってる場合か!」

カイエンは困惑し、ディアーハは怒る。
そんな二人に目もくれず、ルナシータをボリボリ貪る私。
この光景には、邪神も少し怯んだようだった。

『あり得ぬ……私を前にして……なんという態度……恐れはないのか……』

「え?こわいボリボリ……ですけどゴリッ……でも、ボリボリ……ゴリッ、ボリボリ……」

「食べながら喋るんじゃねー!」

ディアーハが鬼のように怒るので、仕方なく飲み込んだ私は、邪神に向き合った。

「怖い、悲しい、不安……そんな時は美味しいものを食べればだいたい解決するんです」

『な……』

邪神は美しい姿をユラリと歪めた。
終始余裕をかましていた敵の、初めての動揺に……私の方が動揺した。

何か、変なこと言った、私!?

『正しいぞぇ。聖女よ、お主の考えは正しい。妾がお墨付きをくれてやろうぞ』
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