すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
次に目が覚めると、私はいつもの病室とは違う仮眠室にいた。
紫苑に手を握られ、私は身体を半分起こした。
「沙奈、辛かったな。」
近くに座っていた大翔先生が、私を抱き寄せてくれた。
安心のできる温もりに、再び涙がこぼれる。
あんなに怖い思いをしたのは久々だった。
忘れかけていた感情が再び蘇り、私を苦しめていった。
「先生…。
怖かった。
あんなに息苦しくなったの初めてだよ。
私、これから一生あの人に付きまとわれるのかな。
居場所まであの人に知られた。
もう、紫苑や翔太と一緒に幸せに暮らすことなんて出来なくなっちゃうのかな?
ずっと、こんなに苦しめられながら生きていかないと…いけないの?」
涙で大翔先生の顔もまともに見られなかった。
あの人と再会するまで、紫苑や翔太と幸せに暮らしてきたのに。
家族の温もりに触れられたと思ったのに。
一生付きまとう暗い過去。
傷つけられてきた身体に心。
それが、あの人との繋がりを思い出させる。
「沙奈。ちょっと、抱いてもいいか?」
頷く間もなく、私は大翔先生の膝に乗せられ向かい合う形で座り、さっきよりもさらに近く深く抱きしめられていた。
「先生…」
「ごめん、耐えきれなくて…。
しばらく、このままで居させて。
このまま聞いてほしい。
沙奈、沙奈の感じる不安や恐怖を完全に消してあげることは出来ないかもしれない。
だけど、俺は沙奈を支えていきたいんだ。
沙奈が辛い思いをしているなら、俺も一緒だ。
もう二度と、沙奈があの父親に再会できないように俺は沙奈の傍にいる。
沙奈の父親は、沙奈を刺した罪と俺達の仕事を妨害した罪で警察に捕まった。
執行猶予もついていたらしいから、そう簡単に出てくることなんてできない。
沙奈。
もう二度と、あの父親と関わるな。
関わろうとしなくていい。
沙奈には申し訳ないけど、あの人はまともに話せるような人間ではない。
あの人と、向き合わなくていい。
その代わりに、俺が沙奈を幸せにするから。
一生かけて、お前を守る。」
『守る』
その一言は、私の心にかかった霧に陽射しが射し込むかのように先生の言葉が希望のように思えた。
相当の覚悟がないと、誰かを守るなんて言葉にすることなんてできない。
紫苑や翔太を見てきたから余計に分かる。
私を育て守ることが2人にとってどれだけ責任に思っていたのか。
だからこそ、大翔先生の覚悟と言葉の重みが十分に伝わる。
軽んじる言葉ではない事だと、子供の私でも分かる。
それに、大翔先生と2年間一緒に時間を共有してきたんだから。