すてきな天使のいる夜に〜2nd Sstory〜
ーside 沙奈ー



優しい温もりの中で私は目を覚ました。



「沙奈、起きたか?」



「大翔先生…


ずっと、抱きしめてくれてたの?」



「ああ。」



「私は大丈夫だよ。


迷惑かけて、ごめんなさい。」



大翔先生から離れようとした時、激しい頭痛と目眩が私を襲った。




「まだ体辛いだろう?


今、痛み止め持ってくるから少し待ってて。」




「大翔先生?」



「どうした?」



「父親の事で、病院のみんなに迷惑かけてごめんなさい。」



「沙奈…」



鎮痛薬を取りに行こうと立ち上がった大翔先生は、再び私を抱きしめていた。



「沙奈が謝ることじゃないよ。


頼むから、自分を責めないでくれ。」



少しだけ、大翔先生の抱きしめる力が言葉と共に強くなったことが分かった。



「大翔先生…」



「沙奈、退院しても絶対に無理だけはするな。


昨日も話したけど、自分を苦しめることはしないでほしい。


俺の知らないところで泣かないでほしい。


そんな切ない表情、他の人には見せないでくれ。


沙奈のことは、俺が受け止めたいんだ。


俺が、沙奈の思っていることや不安を引き出して解決していきたい。


沙奈。


沙奈はもう1人じゃないんだ。


1人で抱え込むことだけはしないでくれ。」




分かってる。



自分だけでどうにも出来ないことがたくさんあるって大翔先生と出会って気付いたから。



昨日も同じ様なことを言われたからわかっているけど…




だけど。



少しだけ、寂しいと感じてしまう自分もいる。



家族で楽しそうに話をしている人達を見ると、たまらなく悲しい気持ちになった。



今まで、考えたこともなかったから。



父親と再会して、殺されかけて挙句の果てに病院まで来て、私を見る目や手を挙げる様子は全く変わっていない事を知った。



悲しい気持ちになるなんて、少しだけ期待していた自分がいたのかもしれない。



「誰かに期待しても、仕方ないと思います。


私は、誰にも愛されることなんてないんです。


ずっと、これからも私は独りなんです。


どれだけ優しくされても、優しい言葉をかけてくれても心にぽっかり空いた穴は塞がることなんてない。


正直、悔しいです。



あんな父親でも、私の中では大きな存在だった。


いつか、変わる日が来るんじゃないかって思ってたのに。



そんな日なんて、来るわけないのに…」




「沙奈…」



「大翔先生も、私に優しくしないで。


中途半端な気持ちで、私に優しくしないで。」



「沙奈!」



期待して、これからも裏切られ続けるのだろうか。



人はそう簡単に信用なんて出来ない。



優しく体を抱きしめてくれる人でさえ離されることに対して恐怖がある。



ずっとこうやって生きていくしかないのかな…



それなら、1人の方がずっと楽なのかな。



抱きしめられた大翔先生を、気付いたら自分から突き放していた。



何もかも信用できない。



やっと、気づくことができたのに。



自分の居場所と、人との繋がりが私を救ってくれたと思ったのに。



もう、分からない。



また私は、誰かに裏切られるの?



生きてるのが、たまらなく辛い。



屋上まで飛び出し、私は手すりの反対側へ身を乗り出し足を投げ出すように座っていた。
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