短編集(仮)
そう思うだけで、なんだかおかしくなりそう。
…さっきの返事は、幻聴じゃないんだよね?
これでもし、あたしの想像が夢の中に出てきたとかだったら、サイアクなんだけど。
頬をつねってみる。
痛くない。ぼーっとしているからだろうか。
もっと強くつねる。
痛い。めちゃくちゃ痛い。夢ではないみたいだ。
「……夢じゃない…」
さっきの会話が、頭の中に蘇ってくる。
『…明日一日、あたしにくれないかな』
『え?』
『あ、や、その…罰ゲーム? っていうか…。うん。誰でも良かったんだけど、その…ね、あたし、男子の友達そんなにいなくて……。やったってことにして流しちゃおうかななんてことも、考えたんだけど……だめ、かな?』
言い訳がましく、早口で説明する。
あたしってなんてずるいんだろう。
なんで天音みたいに素直に「好き」って言えないんだろう。
なずなに文句まで言ってたくせに、結局その罰ゲームを理由に、こじつけて、一日だけのデートを取り付けようとするなんて。
『ああ…、うん。別にいいけど』
——『別にいいけど』
いいんだ。
いいんだ。
いいんだ。
別に、いいんだ。