恋獄の鎖
 具体的な対抗手段も得られぬまま、アインザック家が扱う販路の流通は滞りがちになって行く。

 すると周囲の関心は必然的に滞る原因へと向けられるでしょう。


 他の販路への飛び火を防ぎ、ダメージを最小限で抑える為には機能を失いつつある販路を切り捨てる以外にない。

 分かってはいても実行に移すのは躊躇(ためら)われたはずよ。

 でも今回はそれで切り抜けられたとして今後同じことがあった時にどうすると言うのか。いずれ真綿で首を締めるように、じわじわと販路を縮小するしか道はなくなってしまう。それが"貴族のやり口"だもの。

「シェラフィリア様が僕を見初めて下さったことも?」

 ラドグリス家の仕業だという確たる証拠は何も掴めてはいない。直に取引を持ちかけるにも分が悪すぎる。

 そんな矢先に、ラドグリス家名義で文書が届いた。


 四男のミハエルを婿養子として迎えたいと。


 ミハエルを名指しで指名した、それだけで伯爵は全ての事象に納得が行ったことでしょう。ラドグリス家の令嬢にミハエルが見初められたことが理由だったのだと。

 そして同時に、娘の望む結婚相手を得るという目的の為だけにここまでする、ここまでしてもラドグリス家の懐は何ら痛まないことにアインザック伯爵は恐れ戦いた。

 でも逆に言えば、それだけの後ろ盾を手中に出来るということ。

「ミハエル様ったら、お話を持ちかけたのは確かにこちらですけれど、あまり乙女の想いをあかるみになさらないで」

「申し訳ありません、シェラフィリアお嬢様。ミハエルもお嬢様を前に舞い上がっているのです。どうぞお許しを」

「っ、父上」

< 21 / 41 >

この作品をシェア

pagetop