恋獄の鎖
 そうして形だけは夫婦の体を成してはじまった生活は、あの日ミハエルから向けられた視線そのままにひどく冷え切っていた。

 たとえ結婚式で永遠の愛と忠誠を互いに誓い合ったところで、そこに一欠片の真実すら伴っていないのだ。当然と言えば当然なのだろう。


 周囲から幸せそうだと羨望の目で見られれば、笑みを浮かべて幸せと答える。

 実際、薄皮一枚のみを取り繕った夫婦は幸せに見えているに違いない。

 夫婦同伴で人前に出れば、ミハエルは誰もが羨むほどに完璧な、見た目通りに優しく誠実な夫を演じる。

 わたくしは、彼は不仲であることを隠しもしないと思っていた。だからその真意を全く掴めなかったけれど、何であれ結婚生活が続くのだ。文句を言うこともなかった。


 お兄様がいるから、わたくしがラドグリス家の跡継ぎを産む必要はない。

 でも子供は欲しかった。

 子供ができれば離縁を切り出しにくくなる。

 ミハエルはそう考えているのか難色を示したけれど、結婚して五年目に娘が産まれた。


 わたくしと同じプラチナブロンドの髪と、サファイアの瞳を持つ娘。

 娘はティエラディアナと名付けられ、彼女の存在はわたくしの中にある尖っていた"何か"を少しだけ丸くしてくれた。

 きっと夫婦らしく、家族らしくなる。


 これが母親になるということなのかしら。

 わたくしは漠然と、そう思った。
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