王子と社長と元彼に迫られています!
───フードイベントかぁ。食欲ないけど気になるな。バイクって乗ったことないし、今日は春を先取りしたみたいに暖かいから海の方走ったら気持ち良さそう・・・お台場もしばらく行ってないしな・・・でも・・・。

「・・・ごめん・・・今日は体調悪くて・・・わざわざ来てもらったのにごめんね。」

仮病を使ってしまい罪悪感を感じる。体調が悪い、という程ではないが今は出かける気分になれない。優悟の告白を受けた心が砲丸投げの砲丸みたいにずん、と重くて体まで重くなっているような感じなのだ。誘ってくれたのが柚香だったら行った可能性もあるけれど、なんだか男の人と出かける気持ちにはなれなかった。

「えっ!?体調悪いの!?大丈夫!?今日はあったかいけどずっと寒かったしね!僕、看病するよ。何か必要なものない?」

「ありがとう。大丈夫だよ。イベント行ってきて感想聞かせて。」

「そっかぁ。残念だな。(つぼみ)でも誘おうかな。お台場は写真映えするスポットがあるからって行きたがってたし。」

そう言われて王子様みたいな紬くんとお姫様みたいな蕾ちゃんが白馬みたいなバイクに乗っているところを想像してしまった。

「蕾ちゃん喜ぶよ。
本当にごめんね。誘ってくれてありがとう。」

「ううん。僕がいつも急に来るのがいけないんだよね。ちぃちゃんのこと考えると会いたい気持ちが全てに勝っちゃって、事前に連絡するっていうことが頭から抜けちゃうんだ。」

屈託のないその笑顔は太陽を浴びてキラキラ光る水面のように眩しかったし、春風のようにふわりと暖かく、今日のぽかぽか陽気は紬くんが連れてきたんじゃないか、なんて思った。
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