王子と社長と元彼に迫られています!
「本当に買ってくるものとかないの?」

「うん、大丈夫。ありがとう。」

「そっか、じゃ、お大事にね。」

バイクってハードな乗り物だと思っていたけれど、紬くんが乗っていると全然そんな風に見えないから不思議だ。本当に馬みたいにしなやかに見える。颯爽(さっそう)と走り去る彼の後ろ姿を見ながらそんな風に思って窓を閉めかけ、『ついでに換気しよ。』と網戸とレースカーテンの状態にする。

ベッドに戻りかけて、パソコン画面に表示されている動画サイトの上部の検索窓にお台場のフードイベント名を入力するとライブ配信しているチャンネルが表示された。体の大きな、いかにも食べる事が好きそうな男性三人組が映っている。その配信を見てみることにした。

『てか、屋台ありすぎじゃね?さすがの俺らでも全部は食えねぇだろ。超迷うんだけど。』

『これさー、人が食べてるの見て美味そうなの買いに行った方が早いんじゃね?』

『おー!グッドアイディア!』

彼らはまずテントの中にテーブルとイスが置いてあるイートインスペースに行ってみるようだった。

『おっ、ストーブついてる。あったけぇ。』

『すみませーん、動画クリエイターなんですけど、映ってもだいじょぶっすか?』

その問いかけに『いいですよ~。』と女性が答える。

『あざーすっ!何食ってるんすか?』と言いながらカメラが声の主と思われる女性と、向かいに座る男性を映した。その瞬間、寝そべりかけていたベッドから転げ落ちるようにして画面に釘付けになってしまった。

その男性は優悟だったのだ。
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