受難体質の女軍人は漆黒の美形獣人に求愛される
 断じて、モテる牝馬は栗毛が多いからレーヴもそうなのだろうとか、そういう意味ではない。
 馬にくわしい者だとそういう意味に捉える者もいるようだが、そういった面々は好奇心のままにレーヴを訪ねてきては、勝手に残念がって去っていく。失礼な話だ。

「恋が成就しない場合はどうなると思いますか?」

 レーヴは、こうなった経緯がわからなかった。

「大変残念なことに、塵となって消滅してしまうのです」

 まるでおとぎ話だ。最後はキスをして末長く幸せに──ハッピーエンドが定番だろう。
 塵となって消滅するバッドエンドは、大人向け恋愛小説にありそうだ。

(だけど、それが私と何の関係があるっていうの?)

 見た目は正直、中の下。
 王都で仕事をしているので清潔感だけは気をつけているが、化粧も服も興味なし。
 軍服以外はシンプルなシャツにこれまたシンプルなパンツを合わせたスタイルか、ざっくりしたリネンのワンピースを着るくらいで飾り気もない。
 冬になればおばあちゃんお手製のパッとしない毛糸の帽子やマフラーを使うので野暮ったくなる。
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