訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!
「胸を、見せてくれ」

 少し前に伯爵家の庭園でそう言われた時、すごく驚いたのを覚えています。同じ台詞を、今、寝室で言われました。

「ふふっ」
「何故、笑う?」
「だって、あの時と同じようにおっしゃるから」

 パーティは無事に終わり、お義父様やお義母様にもお褒めいただけて、私は上機嫌でした。マーガレット殿下から直接ご説明頂けたことも、痛々しかった傷痕が美しい薔薇の形になったことも、その一因です。
 パーティの最中は、ウィルがとにかく優しくて。私が彼の特別な存在であるということを、皆さんの前で明確に示してくださったことが、私にかつてないほどの自信をくれていました。

 そんな嬉しいパーティを終えて、入浴を済ませゆっくりしていたところに、続き扉からウィルがやってきました。
 そしてどこか緊張した様子で、冒頭の台詞を言ったのです。

「駄目だろうか」
「いいえ、良いですよ。マーガレット殿下に素敵な形にしていただいたんです。古くて深い傷だから、完全に消すのは難しかったみたいで」

 そう言いながら、寝巻のボタンを上から三つだけ外しました。そして傷痕の部分だけが見えるように少しだけ前を開いて、胸元をウィルに見せます。恥ずかしくて俯いていると、ウィルが息を飲むのが聞こえました。

「触れても良いだろうか」
「……はい」

 恐る恐る、そっとウィルが私の傷痕に触れます。恥ずかしいけれど顔を上げウィルの顔を覗くと、今にも泣きそうに歪んでいました。そんな顔をして欲しい訳ではないのに。思い描いていた反応と違って戸惑いました。

「痛かっただろう。あの時は本当に──」
「素敵でしょう?薔薇の形なんですよ?私とっても気に入りました!……だから、謝らないでください」
「あぁ。ありがとう」

 寝巻のボタンを再び閉じようとしたところで、その手をウィルに握られ止められました。

「ローズ、あの時、酷いことをしてしまった私を、嫌いにならないでくれて、ありがとう」
「ウィル……。私、小さな頃からずっと、今もウィルが大好きです」
「ローズ!愛してる!」

 ぎゅうとウィルに抱きしめられました。そして優しく唇を重ね合わせると、二人でおでこをぶつけ合って笑いました。
 そうしてウィルは、安心したように微笑むと、私の胸にキスを落としました。

「ひゃっ」

 突然ひんやりとしたものが胸に触れて驚きました。私の胸元から見上げてくるウィルは、先ほどまでの泣きそうな顔ではなく、獰猛な瞳を携えていました。そして、悪戯に笑むと今度は私の唇を荒々しく奪います。

「んんっ!」
「早く、結婚しよう」

 その夜、私はウィルから沢山の嬉しい言葉を貰い、幸せをいっぱい感じ、そして、恥ずかしい展開に混乱し、部屋中に花を溢れるくらい咲かせてしまったのでした。



*** おわり ***
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