訳アリ令嬢ですが、憧れの公爵様に溺愛されています!


『ローズ!今日は沢山お花を咲かせたね!』

 湯浴みも終わりベッドで考え事をしていると、妖精のデイジーが話し掛けてくれました。心乱れる出来事の連続で、心身ともに疲れ切っていた私は、デイジーの登場がとても喜ばしく感じました。

「ああデイジー、私婚約するかもしれないみたいなの。全然信じられないけれど。」
『こんやく?』

 長年私と共に過ごしてきたデイジーにも、縁遠い言葉でしたね。「結婚のお約束をするということよ。」と説明しました。

『ローズは誰と結婚するの?』
「婚約するかもしれないだけで、まだ、結婚するかは分からないけれど…。ウィリアム・エルフィストン様よ。ウィル…と昔呼んでいた方。覚えている?」
『ウィルってあのウィル?ローズを傷つけたウィル?』
「ふふっ。そうね。あの事故のこと、忘れていなかったみたい。責任を取って、私をお嫁さんにするんですって。」

 そう言って説明しながら、気分は落ち込むばかりです。私には結婚は無理だろうと思っていたのだから、結婚が出来るのなら、ウィルとなら、とってもラッキーなはずなのに。

 どうしてこんなに、胸が痛いのかしら。

『ウィルはローズをまた傷付けた?またいじめるの?』

 私の心の浮き沈みを察知して、デイジーは心配そうに私を見上げました。

「いいえ、ウィルはいつも優しいのよ。いじめたりしないわ。」
『こんやく、嬉しい?』
「そうね。喜ばしいことなのだと思う。ただ、私はお花屋さんになるのだと思っていたから、まだ実感が湧かないの。…それに…」
『それに?』

 愛のない結婚を嘆く資格なんてないのです。
 でも、他の誰でもなく、ウィルのお嫁さんになるのならば、貴方に好かれて求婚されたかった。

 もうずっと何年も叶わないと自分に言い聞かせてきたのに。

「なんでもないわ。デイジー大好きよ。そろそろ寝るわね。おやすみなさい。」
『おやすみ、ローズ!』

 そういうとパチンとデイジーが姿を消しました。
 私は、眠ろうとしても上手く眠れぬまま、夜更けまで考え事をし続けたのでした。
< 18 / 100 >

この作品をシェア

pagetop