嘘と愛

 お墓を後にした大雅と零は、そのまま宗田家に向かった。

 宗田家では、ディアナが死亡した事でバタバタとしていたが、入籍もしていなかった事からあまり騒動にはならなかった。

 アメリカにいる夏樹と空も、幸喜がディアナと入籍していなかった事を知ってホッとしている。

 手続きは全て唯一の身内である楓が行った。

 
 あれから楓は宗田家に住むようになった。
 そして8月に入ってから、名前をイリュージュに戻した。
 苗字はそのまま小賀を使っていたが、現在は幸喜と入籍をして宗田イリュージュとなった。

 国選弁護人の仕事は控えるようにと、幸喜に言われ宗田ホールディングの顧問弁護士として働くようになった。

 入籍しても結婚式はしなくていいと、イリュージュが言い出して未だに結婚式はしていないが結婚指輪は買って2人ではめている。

 今更子供ももうできないし、これからは離れていた22年間以上に2人の時間を楽しみたいと言っている幸喜とイリュージュ。

 2人で生活するようになり、一緒にご飯を作ったり、お風呂にも一緒に入っているくらいとても仲良くしている。


 一方。
 夏樹と空と一緒にアメリカに行った椿は…。

 幸喜から楓と大雅が調べた資料を元に、自分も誘拐されてきた子供だったことを知って暫くショックを受けていたが本当の両親に会いたいと言い出して、日本に戻ってきた。

 そして理華の入院している施設を訪ねていき、一緒にいた父の優太とも再会した。
 椿は優太とそっくりで、理華は一目見て自分の子供だと分かった。
 優太も理華の若い頃に似ているところがある椿を見て、納得できた。

 22年ぶりに見つかった我が子に感動して、理華の精神も安定して回復に向かい始めて退院の兆しが見えてきた。

 椿は宗田家から籍を抜いてもらい、草加部家に行く事にした。
 名前も草加部幸に変えて、これから家族との時間をしばらくは過ごしたいと言っていた。

 
 家は金奈市から離れた総有市にある為、もう幸喜達に会う事はないと思うと言っていたが、時々は遊びに来てと幸喜もイリュージュも言っていた。

 草加部家も、宗田家ほどではないが資産家でお金持ちの家である。
 優太は現在は運転手の指導員になっていて、不規則な勤務からは解放されて、のんびり仕事をしている。



 ピンポーン。
 チャイムが鳴り、イリュージュが玄関に向かった。

「いらっしゃい」


 ドアを開けると、大雅と零がいた。

 大雅はちょっと照れた顔をしている。


「どうぞ、入って」

 リビングに行くと、食卓に飾ってある花と美味しそうなシフォンケーキに、零が嬉しそうな顔をした。
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