嘘と愛
「大丈夫かい? 何か思いつめ顔をしていたけど」
「別に…」
冷たく答えた零。
そんな零に幸喜は歩み寄って行った。
「ねぇ、うちにおいで」
はぁ? 何を言い出すの?
チラッと幸喜を見た零はそう思った。
「家に帰れなくて、困っていたんだろう? 今、大雅と一緒にいるんだろう? 大雅は今、取り調べ中だから。事件の関係者と一緒にはいられないだろう? 」
「…お気遣いは結構です。…貴方も容疑者の関係者ですから」
冷たく突っぱねた零だが。
幸喜は零の肩から掛けている鞄をそっと取った。
なにをするの? と思って零は幸喜を見た。
「重たいだろう? 」
「別に…」
「話したいことがあるって、前に言ったよね? ちゃんと、話をさせてくれないかな? 僕は、ディアナとは正式な身内じゃないから」
どうゆう事?
じっと零は幸喜を見つめた。
幸喜はそっと微笑んで零を見つめた。
「僕はね、ディアナと籍を入れていないんだ」
籍を入れていない?
どうゆう事?
驚いている零だが、冷静な表情を装っていた。
「そうだなぁ。言葉で言うより、証拠を見せた方が刑事さんは信頼してくれるかな? 良かったら、今から市役所に行って戸籍を見せてもらってもいいよ。その方が、確信できるだろう? 」
「そんな事は…」
「警察にはちゃんと話して、戸籍も見せているよ。だから、僕はディアナとは身内じゃないよ。ディアナは殆ど家にいなかったし、事故に遭うまで音信不通だったから。僕は、何も知らないんだ」
信じられないと思った零だが。
幸喜の顔を見ていたら信じていいと伝わって来る。
何故そんな思いが伝わるのか分からないが、幸喜は嘘は言っていないと伝わって来る。
「ごめんね、すごくいい加減だって思ったよね? 」
「…別に…そんな事は…」
「とりあえず、うちにおいで。娘の椿は、当分の間いないから」
「え? 」
「急に社員研修が決まったようで、しばらく家に帰れないって連絡が入ったんだ。まぁ、椿がいても全く気にすることはないんだけどね。大雅の大切な人だから、困ったときは助けるのは当然だと思うし。何も気にしなくていいから、少しの間じゃないか。うちにいればいいよ」
強張っていた零の表情が、少しだけ和らいだ。
突き放さなくてはならない人だと、それは十分に分かっている。
でも、幸喜の言葉は1つ1つがとても優しく響いてくる。
私を捨てた人なのに…どうして?
判らない気持ち込みあがってきた零…。
「…分かりました…」
まだ素直じゃないが、零はそう返事をした。