エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
ナワポンに悪気はなく、『隠し事はしない方が楽だよ』と笑って言われたのだが、楽ではない。
美緒にライバル視されるし、赤沼にも――。

玄関ドアが開く音がしたので、詩織は急いで事務所スペースに出た。
来客の対応や電話番も仕事の内である。

入ってきたのは客ではなく、矢城と赤沼であった。
ふたりは、とある事件の加害者から依頼を受けて、被害者側との示談交渉に出かけていたのだ。
そのため矢城はひげを剃って髪を整え、非の打ちどころのない出で立ちである。

「お帰りなさい。お疲れさまでした」

小走りでふたりを出迎えた詩織に、赤沼がズイと距離を詰めた。
矢城ほどではないが高身長の彼を、詩織は見上げる格好になる。

「浅木さん、そのような笑顔を先生に見せるのはやめてください」
「え……?」

詩織が自分の頬に触れて目を瞬かせると、赤沼が眼鏡を押し上げた。

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