エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
詩織はハッとしたように周りを気にし、控えめに矢城の胸を押す。

「せ、先生、こんなところでそういう冗談は――」

「冗談にするなよ。なにか勘違いしてないか? 俺は映画やドラマに出てくるような紳士じゃなく、性欲で動くただの男だ。若い美女に一生懸命追い縋られたら、食おうか、となる。考える時間を五秒あげよう。俺の頬をひっぱたくか、キスされてホテルに連れ込まれるか、決めてくれ」

矢城はククと笑いながら、ゆっくりと顔を近づけていく。
詩織は目を丸くしているが、頬を張ってはくれない。

五秒経ち、十秒経ち、唇が触れそうな距離で待ってあげているのに、拒否する気配がないから矢城の方が慌てた。

(脅しすぎたか……?)

長い睫毛や毛穴などないような滑らかな肌が見えていても、近すぎて彼女の表情がわからない。
もしや固まって動けないほどの恐怖を与えてしまったのではないかと、矢城は焦って離れた。

「詩織ちゃん、ごめん。今のは冗談で――」
「冗談にしないでください」

同じ言葉を詩織に言い返された。
怖がっている様子はなく、少し怒ったように頬を膨らませている。

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