エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
このままでは先住の隣家の方が引っ越さなければならないと、上島は泣きつかれているという。

「浅木さん、なんとかしてやって。町内会長だろ?」

父は唸り声を漏らして、三割ほど白髪の頭を掻いている。
すっかり挨拶しそびれた詩織も、廊下の曲がり角に突っ立ったまま、父と一緒に困り顔をしていた。

(警察も駄目で、お父さんが注意しても聞いてくれない人には、どうすればいいのかな……)

すると、後ろから詩織の肩に手が置かれた。
顔だけ振り向けば矢城がいる。
詩織も父も座敷に戻ってこないので、心配したようだ。

詩織に優しく微笑みかけてから、矢城が前に出た。
「お困りのようですね」と上島に声をかけ、父の隣に片膝をついた。
「お客さんが来てたんかい」と目を瞬かせた上島に、父が言う。

「詩織の婿さんだ。東京から結婚の挨拶に来てくれてな。聞こえるだろ?」

廊下の奥へと視線を向けた父に問われ、上島は今、宴会の賑やかさに気づいたようだ。

「そんな特別な日に面倒ごとを持ち込んで悪かったなぁ。出直すわ」

苦笑して立ち上がろうとした上島を引き止めたのは矢城であった。
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