エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
ポケットから使い込んだ革の名刺入れを取り出し、一枚を差し出す。

「私は弁護士をしています。ご近所トラブルの解決も手掛けていますので、よろしければお力になりますよ」

そう言った矢城に「へぇ、弁護士さん」と感心した顔を向けた上島だが、直後に残念そうに眉尻を下げた。

「せっかくだけど無理だよなぁ。弁護士に頼める金はない」

詩織の父も、娘婿とはいえ、値引きしろと図々しい頼み事はできないようで、「そうだよな」とため息をついている。
矢城はふたりを交互に見て口角を上げると、心配無用とばかりに頼もしく言った。

「私の事務所は依頼者の財政事情を考慮した料金設定を心がけております。お支払いに不安のある方にはいただかないことも。ご安心ください」

『またですか』という赤沼の文句が聞こえそうな気もしたが、矢城らしいお人好しで温かな対応に詩織は頬を緩めた。

(どん底に落ちた私も、そんな風にすくわれた。出会った時からずっと変わらず、正義の味方みたいな人……)

父が驚きの目を矢城に向けていた。

「浩介くん、いいのかい? 詩織の婿さんだからって無理してないかい?」
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