エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
「相手方に直接、謝罪はされたんですか?」
「今、どこへ行こうとしてたんですか? 芸能界復帰を考えてますか? 浅木清良(きよら)さん、ひとことお願いします」

清良は芸名で、本名は詩織。
清純派女優として二年ほど前にデビュ―し、ドラマや映画のわき役の仕事を順調にこなしていたのだが、昨日、所属先の芸能事務所を解雇されてしまった。

(もう、やめて! 私は本当に知らなかったの……)

年齢様々な三人の男は、雑誌記者だろう。
少しの気遣いも遠慮もなくボイスレコーダーを向けて質問してくるから、詩織は恐怖でしゃがみこんだ。
なにか話せと求められても、体が震え、声も出せない。

(助けて……)

その時、背後に気色ばんだ低い声がした。

「女性ひとりに寄ってたかって、なにやってる? 怯えているじゃないか」
「い、いえ、僕らは記者で、インタビューを申し込んでいただけで……」
「マスコミ、ねぇ」

呆れ声の主の方に、詩織は恐る恐る振り向いた。

三十代半ばくらいだろうか。
詩織よりひと回り以上年上に見える彼は、ネイビースーツにベージュのビジネスコートを羽織っている。
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