エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
ストレートの短い黒髪の分け目は七三だが、決しておじさんくささはなく、仕事のできる男といった風貌だ。

スッキリと後ろに流された前髪は、一束だけ形のいい額に落ちかかり、それが色気も醸していた。

彼はコートのポケットに片手を突っ込み、片足を斜めに投げ出した。
気怠げな態度をとっていても、記者たちに向ける眼光は鋭い。

アーモンド形の瞳と筋の通った鼻に、凛々しい眉。
男らしく端整な顔立ちをした長身の彼が、詩織の腕を掴んでいる記者に一歩近づいた。
その距離は九十センチ。

蔑むような視線を記者に向けてから、彼がフンと鼻を鳴らした。

「嫌がる女性の身体を拘束し、逃げ道を塞いでのインタビュー? 明らかに触法行為だ。警察を呼ぼうか。それとも訴えられる方がいい?」

彼はコートの合わせ目を開くと、スーツの左胸をあらわにした。
襟に留められていたのは、金色のひまわりの花――弁護士バッジ。

(撮影で見たことあるけど、本物は初めて……)

ドラマの小道具とは違い、輝きが控えめなのは、使い込まれているせいであろうか。
それが逆に頼もしく感じられた。

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