エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
浅木清良の顔は連日、テレビのワイドショーやネットニュースを騒がせている。
顔を見せれば、事情は伝わるはずだと思ったのだ。

ところが彼は、頬を人差し指で掻いて、困り顔をする。

「別嬪さんだな。アイドルか女優さん? 悪いが俺は芸能界に疎くてね。顔を見せてくれても、君が誰なのかわからない」

詩織は驚いて息をのみ、彼を見つめた。
その後には、二重の大きな瞳に涙が溢れ、血色の悪い陶磁器のような頬を流れ落ちる。

(私を知らない人が、まだ日本にいるんだ……)

「嬉、し……」

凍てつく大地に春の光が差し込んだかのような希望を、胸の奥に感じていた。
自分の居場所は完全になくなったわけじゃない。芸能界を追放されたって、きっとどこかにあると、思うことができたからだ。

両手で顔を覆い、肩を震わせた詩織は、子供のようにしゃくり上げて泣いてしまう。

「参ったな……」

困惑したような声の後には、フッと笑う柔らかな吐息が落ちた。

「ここは寒い。とりあえず俺の事務所に行こう。すぐそこの法律事務所だ」

優しく誘ってくれた彼は、それから自嘲気味に笑う。

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