エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
「しっかし、ワケアリを拾うの何人目だ? 俺は、そういう運命、背負ってんのかな」

頭をワシワシと撫でられた。
大きく温かく、頼りがいのある手で。

これがどん底女優・浅木詩織が、弁護士・矢城浩介(やぎこうすけ)に救われた瞬間であった――。


下町の商店街の一角に、二階建てで奥行きのある、レトロな趣の家屋があった。
矢城法律事務所の看板を掲げたこの建物が、矢城の個人事務所兼、住まいだ。

詩織は事務所内でコーヒーを淹れている。
カップはひとつ。それを漆塗りの丸盆にのせ、相談室と書かれた木目のドアをノックして開けた。

広さ六畳ほどのフローリングのその部屋には、長机がふたつ、向かい合わせに置かれている。
椅子は六脚。
そこに矢城を含めた男性三人が座っていた。

矢城の隣は赤沼(あかぬま)という二十六歳の青年で、パラリーガル――矢城の助手をしながら勉強し、弁護士資格の取得を目指していると聞いた。

この法律事務所の職員は、矢城と赤沼のたったふたりであった。
一週間前、詩織が矢城に拾われるまでは。

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