エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
あの日の夜、詩織がとある騒動で全てを失った事情を打ち明けると、矢城は法律知識のない詩織を事務員として雇ってくれて、住まいまで提供してくれた。
感謝してもしつくせない。

「失礼します」

話の邪魔にならないよう小声で言った詩織は、矢城の向かいの席の中年男性にコーヒーを出す。

「どうも」

ぺこりと頭を下げた男性はポロシャツにスラックスという格好だ。
彼は五分ほど前に、無料相談でやってきた客である。

チラリと詩織を見た客が首を傾げたのは、どこかで見た顔だと思ったからだろうか。
ギクリとした詩織だが、世間を騒がせている元女優だとは気づかれなかった。
それは、客の男性が今、他人に興味を示している余裕がないせいであろう。

無料の法律相談は三十分まで。
すぐに矢城の方に顔を戻した彼は、経営している店の帳簿や銀行の借り入れ、消費者金融の返済明細などを机いっぱいに広げ、債務整理について早口で尋ねていた。

頷いて聞いていた矢城が、落ち着いた声で返答する。

「任意整理は三年程度で返済可能と思われる方が対象となります。手続きの流れとしてはまず、利息制限法の上限金利への引き直し――」

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