身代わりとして隣国の王弟殿下に嫁いだら、即バレしたのに処刑どころか溺愛されています
『歌ってよ、サーヤ』

「え?」

考え事に割り込むように聞こえた声に、ビクッとする。

「誰?」

ユキのように、頭の中に語りかけてくるけれど、その声は全く違うものだ。低くて、温かい響き。

『サーヤの歌が聴きたい』

まさか……
ハッと狼に視線を向けると、まるで正解とでもいうように、そのエメラルドの瞳がキラリと光った。


『サーヤの歌声は、心地良い。疲れている時は安らぐし、怪我も癒してくれる』

「怪我が、癒やされる?」

精神的な効果なら、そういう研究に触れたことがある。それに、なによりそういう効果を信じて慰問に行っていたから理解できる。
けれど、怪我が癒やされるって……


『不思議だな。サーヤの歌は、傷を癒してくれた。動物達が集まってくるのもよくわかる。サーヤの歌には、癒しの力がある。なあ、歌ってよ』


癒しの力……


〝癒し?慰め?元気付けっていうのか……うーん、聴いている方は、その時に欲しいもんがもらえた気になるんだよなあ、月森の声は〟

ふと、金城先生に言われたことを思い出していた。




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