Be My Valentine.
「あ、ほんとだ。」
「はい、これ。教卓に忘れっぱだった。」
「わりぃ、助かった。」
彼は私の手からペンを取り、胸ポケットに差し込んだ。
「先生、ちょっとここにいていい?」
「あー、いいぞ。そこ座ったら?」
「ん、ありがとう。」
私は置かれた丸椅子に腰掛ける。
「バレンタインって、なんなんだろね。」
「なんか3世紀に聖ウァレンティヌスって人が殉教した日らしいぞ。
それを日本のチョコレート会社の販売促進が今の文化に繋がってるって、森田先生が言ってた。」
「...へー。」
私は先生の机の上に並べられた大量の紙袋を見つめる。
「先生、モテモテだね。大変そう。」
「大変そうなのは斎藤もだろ。
あの大量のクッキーは配り終わったのか。」
「あーうん、ほとんど。残りは兄ちゃんの胃の中行き。」
私は足元に置いたカバンに目を向けた。
「で、本命は渡せてないってか。」
「は!?なんでそれを。」
「うちのクラスのアイドル様のバレンタインの手荷物なんて、クラスのほとんどの奴が見てるんだろ。
今日何人もの男子生徒に聞いたわ、お前のその袋の話。」
先生は私が膝の上に置いた袋に横目を流した。