潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
「……わかった」

舞の決意が揺るがないと思ったのか、譲は渋々舞の提案を受け入れてくれた。

「ありがとうございます。じゃあ、そろそろ……」

エプロンを外して帰り支度を始めた舞の左手首を掴み「交換条件がある」と、譲が切り出してきた。

「今までのお礼をさせてくれないか?」
「お礼?」

手を止め、譲の顔を見やる。
前髪に隠れていて表情まではうかがいしれなかったが、掴まれた手首は承諾しろと言わんばかりに強く握られていた。

「掃除させて、軽食やお菓子作ってくれたり、コーヒーまで淹れさせているのになにもしないわけにいかねぇだろ」
「でも、掃除用具のお金とか、洗剤とかお金もらってましたし」

「それは必要経費だろ。俺は、お前に相応の対価を払ってない」
「大丈夫ですよ。ボランティアみたいなものだから気にしないで下さい」

掴まれていた手首を外そうと右手をかける。

「……俺が気にするつーの。じゃあ、メシ奢らせろ」
「ご飯? 土日は、譲さん着替えるの面倒くさいってスウェットで過ごしてるじゃないですか。私、スウェットの人と食事に行きたくないです」

「わかった。じゃあ、うちの会社は、一応建前で毎週水曜日は早帰りなんだ。だから、仕事早く終わらせるから水曜に食事をしよう。それなら、俺もスーツだから問題ない」

そこまで言ってくれているのに、断ることは出来ないと腹を括った舞は、ため息まじりに「わかりました」と、答えた。
< 42 / 62 >

この作品をシェア

pagetop