潔癖女子の憂鬱~隣人は、だらしない男でした~
「あ、いえ。予約はしてないんです。知り……あ、友達と待ち合わせで。2名なんですけど」

知り合いっておかしいか、と思い友達と言い直す。

「おしゃべりが弾んでも大丈夫なようにココがおすすめです」と、少し奥まった場所に案内された。
きっと店員は、女友達と待ち合わせだからと思って気を遣ってくれたのだろう。
その心遣いに内心、違うんだけど……と思いながら、苦笑いをこぼす。

譲との関係は、友達という括りもなんだかしっくりこない。

掃除してるだけだから家政婦?
いや、でもお茶もしてるから、茶飲み友達?

家には上がっているけど、私生活も仕事も舞は何も知らない。
掃除の時も、寝室には入らないでと言われたから、どこか一線を引かれているような気がして自分から聞くこともしなかった。
譲からも舞の日常について聞かれることはなかったのだけれど。

ーー私、譲さんの苗字すら知らない……

最初に名乗られたのは、譲という名前だけだった。
そのときは、なんで下の名前だけなんだろ、と思ったが、こんなに深く付き合うーーといっても、部屋の掃除だけだけどーーとは思っていなかったから、深く追及することはなかった。
きっと、譲にとっても初めは軽く考えていたのだろう。
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