幼馴染に恋をして(心愛ver)
緊張しながら彼と教室に入ると
彼は直ぐに顔見知りを見つけたのか私を置いてそっちに行く。
そこには男子一人、女子一人が居た・・
私はさっきまでの浮かれた気分からあっという間に
奈落の底に堕ちてしまった・・
そして彼を取り巻く女子の視線も気になっていた・・
そんなブルーな気分だったのに彼が
「斉木」と私を手招きしながら呼んだ。
一瞬で又気持ちが持ち上がる自分に自分自身苦笑いするしかなかったが
呼ばれるままに近づくと
「斉木、こいつ安藤 こっちは落合 この二人は塾の友達。
こっちは斉木 小学校の友達」と紹介してくれた。
「安藤 翼です。 宜しく」
「私は落合 胡桃 クルミって呼んで。斉木さんの名前は?」
「私は 斉木 心愛です。」
「え~ 可愛い名前 ココアって呼んでいい?」
「はい」
凄くフレンドリーな子で少し押され気味な私に構わずグイグイくる。
「胡桃、前のめり過ぎ・・斉木ちゃん 髪の毛もフワフワしていて女の子だね~」
「はぁ~ 翼 私が女の子じゃないって言いたいの?」
「突っかかってくる時点で女の子じゃないだろう」
二人の仲の良い遣り取りが微笑ましかったけれど
安藤君が私を「斉木ちゃん」と呼びクルミちゃんを
「胡桃」と呼んだことに私は安藤君を「翼」と呼んではいけないような気がした・・
「安藤君とクルミちゃん仲良しだね」と言うと
二人は「そん『そんな事無いよ』」と声が被って否定したので余計笑えた・・
そしてその後、何も言われないのでこの呼び方が正解なのだと思った。
一週間が経った頃に懐かしい遣り取りが教室に響いた。
今回は男子だった。彼に「海斗君」と呼びかけた・・
一語一句たがわず彼は名前を呼ばれるのが嫌なことを
教室じゅうに知らしめた。
私は苦笑いし その様をみていると隣でクルミちゃんが
「相変わらずブレないね~」と
「塾でも?」
「そう、塾でも同じように言っていたよ。小学校でも?」
「うん。全く同じ科白。」
でも、今回は小学校の時とは違い全クラスに知れ渡った。
それくらい彼は女子の間ではアイドル並みに人気があった。
名前で呼べない為、いつしか 陰で彼は「王子」と呼ばれるようになっていた。
人気があるのも当たり前だ・・彼は端正な顔立ちをしていた。
安藤君の話だと一緒に出掛けると必ずスカウトされるらしい。
その美貌は私は会った事が無いが、母曰くお父さんにそっくりなのだと。
何度か見かけたお母さんも綺麗な人だった。
私の母と違い何時も雑誌の中に居る人の様な洋服を着ていて
ジャージ姿を見たことが無かった。
それを思い出し益々私は自分を鏡で見る事に余念が無かった。