ロゼリアの黒い鳥
出来上がった花嫁は、感嘆の吐息が漏れてしまうほどに綺麗だった。
素地がいいのが大きいのだろう。化粧も生えるし、唇の赤い紅がロゼリアの美しさを引き立たせる。白磁の肌もドレスに溶け込んでしまいそうなほどに白くて、綺麗で。
不覚にも片目からポロリと涙が零れ落ちた。
――おめでとうございます。
そう言ってあげたいのに、この咽喉は拒否する。
心の底から祝福したいのに、どうしても地獄へと送り出すような気持ちが消えなかった。
「泣くんじゃないよ。……ちゃんと笑顔で送らなきゃ、お嬢様が不安になってしまうだろう?」
とうとう両目から涙を零し始めたアリシアに、デボラは震えた声で叱咤した。
ハンカチに顔を埋めて何度も頷きながら、涙を懸命に押し留める。
「黒い鳥が戻ってきたわ。……フフっ……あれは番かしら? 二羽とも綺麗ねぇ」
幼子のように喜ぶロゼリアを見つめ、二人でその姿を目に焼き付けた。
「……お母さんが私を殺して……お父さんが私を食べている……」
またロゼリアは歌を口ずさむ。
それは、部屋を出た先の廊下に響き渡り、不気味に聞こえる。
デボラとアリシアは言葉もなく、ただその歌を聞き続けた。