ロゼリアの黒い鳥
今でもこの悪魔の首をへし折りたい気持ちは変わらないが、カイムがいなければ復讐は成し遂げられなかったのも事実だ。ギデオンもあのまま骸となって朽ち果てるだけだったに違いない。
感謝はしない。だが、必要な存在であるとは感じていた。酷く腹は立つが。
「でもその甲斐があっただろう? こうやってロゼリアを手に入れられたんだ。ロゼリアも愛するギデオンが甦って会いに来てくれてとても喜んでいる。ねぇ? ロゼリア。君も嬉しいだろう?」
そうカイムが問いかけると、彼女は首を傾げた。
何を問いかけられているか分からな様子だ。
「……フフ……壊れた君は可愛いね」
だが、そんな彼女の反応に満足したのか、カイムは目を三日月型にしてにんまりと笑うと、また身を翻して今度はギデオンの顔の側に寄ってくる。
「ねぇ、君は今幸せかい? 殺人と略奪の上に成り立った幸せの味はどうだい? 蜜のように甘いかい? 甘美さに頬が蕩けそうかい? 君は顔を崩さないから分かりにくいねぇ」
矢継ぎ早に質問をしてくるカイムが煩わしくて手で払うも、彼はひょいとそれを除け、また反対側に寄ってきた。
「聞かせておくれよ、ギデオン。ロゼリアの父親を殺したとき、どんな気持ちだった?」
どんな気持ち? と頭の中で反芻し、そしてあの瞬間を思い浮かべる。