ロゼリアの黒い鳥
「だから今最高に幸せだ。あいつを殺して復讐を果たし、この腕の中にロゼリアがいる。俺はこれ以上の幸せはない。まぁ、お前は幸せな俺など見たくはないだろうがな」
「そんなことはないさ。君が幸せでオレも嬉しいよ。まぁ、面白みはまったくなくなったけれどね」
嘘の中に織り込まれた本音。
だから悪魔など信用できないのだと、ギデオンは大きく溜息を吐いた。
「それで? お前はまだ俺たちに付き纏うのか? これからは苦しむ俺たちの姿など見れなくなるぞ?」
お湯の中に沈んでいたロゼリアの手を持ち上げて、手の甲にキスを落とす。
おそらくこのまま覗き見ていても、カイムにとって面白いものは一切見られないだろう。ギデオンはロゼリアが側にいれば幸せであるし、彼女のことも幸せにする。
お好みの嘆き悲しむ姿など見られないはずだ。鑑賞する価値もない。
だからカイムには消えてほしい。いつまでも見られているのは不愉快だ。
「はいはい。心配しなくても、もう君たちとはお別れするつもりでしたよ。これ以上一緒にいても面白くなさそうだしね。次の獲物を探すとするさぁ。君たち以上に楽しませてくれそうなやつのところに」
「そうしてくれ」
カイムのその気であるのならよかった。
互いに利用価値がなくなったということだろう。