ロゼリアの黒い鳥


「ロゼリアを捨てたら、そのときは笑いに来てあげるよ」
「なら、もう二度と会うことはないな」

 カイムの皮肉をきっぱりと切り捨ててやると、意地の悪い悪魔は『お手並み拝見』と楽しそうに返してきた。

「オレも二度と会いたくないかな~。君の幸せそうな顔は嫌いだ」

 最後の最後まで失礼な言葉を残し、カイムはすぅっと消えていく。宙に溶けて姿が見えなくなってしまった。

 いつもならそのままどこかに身を潜めてこちらを見ているのだろうが、もうそんなことはないのだろう。


 悪魔は消えて、これでようやく二人だけの世界。


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