ロゼリアの黒い鳥


 アリシアは己の卑怯さに腹を立てながら、ヴェールとアクセサリー類を手に持った。

 きっと、ロゼリアの目には、自分たちも悪魔の使いに見えているのかもしれない。
 あの虚ろな瞳に映り込んだ姿を見たとき、果たしてそこには人間の姿が映っているのか。

 恐れ戦きながらアリシアは俯く。

「……唯一の救いはお嬢様はあんな状態だってことかね」

 デボラの呟きに、何とも言えない気持ちになった。

 あんな状態のお嬢様を嫁がせるなんてという嫌悪感と、それと同時に沸き起こるあんな状態でよかったのかもしれないという救いを見出したような気持ち。

 けれどもそれは外から見た自分たちの勝手な想い。

 ロゼリア自身がどう思っているかなど分からない。
 分かることができなかった。

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