ロゼリアの黒い鳥


 ――次に目を覚ましたとき、ギデオンは血だまりの中で冷たくなっていた。


 目も鼻もどこにあるか分からないほどに顔が腫れあがり、四肢があらぬ方向に曲がって、肌はいたるところに傷ついている。頭はかち割られ、中身が飛び出ていた。

「……ギデオン?」

 本当に彼だろうか。
 目の前で死んで冷たくなっているのは、本当に彼なのか。

 ロゼリアは信じられなかった。
 信じたくはなかった。

 自分の父が、自分の最愛の人を殺した。こんな惨い姿にして、慈悲も情けもなく容赦のない仕打ちを繰り返したなど。

 どれほどの時間、ギデオンは苦しめられていたのだろう。
 どのくらい苦しかったのだろう。
 どれだけ父に止めてくれと願ったのだろう。

 どれだけ……どれだけ……。

「……うぁ……あぁ……ギデオン……ギデオンっ!」

 骸を掻き抱き、嗚咽を漏らす。

 ロゼリアの手を握り締めてくれた手は動かず、泣いている彼女を慰めてくれた言葉は聞こえてこない。

 もう二度と。
 一生。


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