ロゼリアの黒い鳥
「また黒い鳥の話ですか、お嬢様。好きですねぇ」
デボラは呆れたような声を出す。
ロゼリアが黒い鳥の話をするのは常のことで、アリシアも慣れたものだった。現を見れずにいもしない黒い鳥を見つめ続けるロゼリアの手を取り、ゆっくりと椅子から立ち上がらせる。
「……黒い鳥はまた後に見に行きましょう、お嬢様。まずは身体を綺麗にしましょうね」
アリシアが再度そう告げると、ロゼリアはようやくこちらを見てニコリと微笑んだ。
およそ十八歳の娘はするとは思えない、子どものような屈託な笑みをこちらに向けてくる。そして人形のように導かれるままに浴室へと足を運んだ。